三国志漫画といえば、横山光輝先生の三国志、いわゆる『横山三国志』に始まり、流行りの武将女体化まで、実に様々に解釈され多くの作品が生み出されてきた。その中でも特に異質の輝きを放つ三国志漫画が『蒼天航路』だ。

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◆【1~3巻無料】蒼天航路
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 多くの三国志物では劉備を主人公としている事に対し、『蒼天航路』は乱世の奸雄・曹操を主人公とし、その一生を力強く描いている。基本的には正史を踏襲しつつも、その中に多くの著者独特の解釈が埋め込まれ、既存の三国志とはかけ離れた印象を受ける作品でもある。

 物語は曹操の幼少期から始まる。中常侍の祖父を持つ恵まれた境遇に生まれながらも罪人と見れば自らの判断で当然のごとく首を跳ね飛ばす。その様は後の世を牛耳る曹操孟徳を彷彿とさせる。そこから青年期、成人と物語は進み、黄巾党、董卓の暴政、官渡の戦いなど重要なエピソードを曹操の視点で独特の解釈を交えながら物語は進んでいく。後半は群像劇の要素も含み始め、最終的には全てが曹操の覇業へと収束していく。

 蒼天航路の魅力は、なんといってもその独特なキャラクター解釈にある。乱世の奸雄と呼ばれ、悪役を演じることの多い曹操は、乱世を収めた英雄として描かれている。破格の才能を持ち既存の概念にとらわれない。それ故、周囲の人間を困惑させるような言動も多くとるが、その器の大きさから多数の人間を惹きつける人物である。『最も人に興味を示した英雄』と作中で言われているように、『唯材』の思想を掲げ経歴や出自にかかわらず、広い分野での才能の発掘を行なっていく。

 対する最大のライバルである劉備は、単純な聖人君子ではなく、情と道義を持った侠の親分として書かれる。物語の途中では、敵対する曹操のあまりの大きさに、何度も天下を諦め、まるで乞食のように落ちぶれたり、敵から逃げる際に馬車の重量を減らすため、子供も嫁さんも投げ捨てたり、およそ既存の劉備のイメージとはかけ離れた行動を多くとる。しかし、その人間らしい行動や悩みには、多く共感できる部分があり、従来よりもずっと親しみやすいキャラクターとして受け止められるのではないだろうか。

 他のキャラクターも独自の解釈には事欠かない。曹操陣営では、特に、彼に使えた軍師達をクローズアップしており、曹操の突拍子のない言動に振り回されながらも忠誠を尽くし、共に覇業を歩んでいくさまが描かれている。呂布などはなんとドレッドヘアで登場し、素手で人間の体を握りつぶすなど、まるで猛獣のような活躍を見せる。他にもここでは書ききれないほど多くの魅力的なキャラクターたちが存在する。

 また、戦場でのバイオレンスな描写、演出過剰と思えるくらいの奇抜的な戦闘シーン、印象的な台詞回しなど、まるで三国志を題材にしたミュージカルを鑑賞しているような気分にさせてくれる。

 既存のイメージとは違う、少し異質な三国志の物語を楽しみたい方には是非オススメしたい名作である。


>>書籍公式ブロマガ「僕の私の電子書籍」より転載

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