先日行われた、2014年大学入試プロジェクト第3弾「東大・京大 二次試験解いてみた」にて、試験の問題解説をして頂いた「Z会」さんから寸評を頂きました。

番組情報

合わせて、各試験問題を下記にて公開しております。
【東大(読売新聞より)】
 ・東大入試問題一覧
【京大】
 ・数学 ・国語 ・英語 ・歴史 ・物理

また、より詳細な分析が「Z会東大対策ブログ~Z会から赤門突破~」にも掲載中ですので、一緒にご覧ください。


【東大】数学
小問の数が17と,2013年度の10,2012年度の11に比べ大幅に増えた。
文系と一部共通の問題が3題出題された。
第1問,第2問は確実に正解したい。これに加え,第3問(2)まで,第5問の(2)までを正確に解きたい。
さらに,やや難しく,差のつく問題と思われる第3問(3),第5問(3)のいずれかを確保し,第6問で部分点を取って,合計で6割近く得点すれば 合格ラインだろう。

【東大】国語
東大文系国語は、昨年度より全体として若干難化。
評論(第一問)は昨年度並、古文(第二問)はやや難化、漢文(第三問)はやや難化、文系現代文(第四問)はやや難化した。
評論は精神分析と落語の比較を通して「自己」について論じた文章。「分裂を抱えて生きる自己」等、自己・他者について論じた評論の基本なテーマを押さえていると見通しがよくなる。設問は近年の傾向通り標準的だが、(三)の「錯覚」のニュアンスの表現、また(五)の「希望」を文章全体の内容と関連させていかに説明するか等、力の差が出る設問がある。
古文は近世の文章(井原西鶴『世間胸算用』)からの出題。大筋の内容理解には苦労しなかったと思われるが、(一)で訳出しにくい箇所を的確に設問化している点、(二)、(三)、(五)では短い字数にどこまで内容を盛り込むかの判断が難しい点で、例年同様、解答作成で差がつく問題になっている。
漢文は段落が2つに分かれており、場面ごとの関係に注意して読解する必要がある。漢字の語義を文脈から適切に推測する力が例年同様問われていることに加え、(二)では「社稷」の意味が問われており、東大が受験生に求める漢文常識の水準がうかがえる。(五)では基礎知識である「敢不」と「不敢」の違いの理解が曖昧だと、解答の方向性を大きく見誤ってしまう。
文系現代文は問題文の分量が昨年度から大幅に増加したこと、昨年度の評論から一転し、詩人による随筆で論旨がつかみにくかったことから、時間が足りなくなった受験生も多かっただろう。根拠が見定めにくい(一)や、比喩の解釈を絡めた(二)(三)の設問等、方針を定めるのに苦労する設問が含まれており、昨年度以上に解答作成には苦労する。
評論で確実に得点し、古文・漢文で得点を積み上げ、取り組みにくかった文系現代文にもあきらめずにどこまで食いつけたかが勝負。

【東大】英語
4(B)で一昨年の「不要語指摘問題」に戻った以外は,ほぼ2013年度入試を踏襲したものとなった。分量がやや増加し,制限時間に対して厳しい量ではあったが,例年通りの出題で取り組みやすい問題だった。
1(A)(B)ともに論理展開の追いやすい文章だった。(A)では具体例を省き筆者の主張をまとめあげる。(B)は文法的な手がかりがほとんどないので,前後の内容から選択肢を絞ることが必要。
2(A)は,昨年から始まった,写真を見て会話を想像する自由英作文。自動販売機の前に男女と犬がいる写真が示されているが,犬についても触れるのが望ましい。2(B)は People only see what they are prepared to see.(人は見る覚悟が出来ているものしか見ない。)という言葉についての考えを50~70語で述べる自由英作文。内容が抽象的で,具体例が思いつかないとまとめるのは難しい。2014年度入試で最も頭を悩ませた問題ではなかっただろうか。
3のリスニングは昨年同様ディクテーションの出題はなかった。また,これまでは(B)(C)で連動した内容を扱うことが多かったが,今年はすべて独立した内容であった。(A)は素直な問題なので確実に得点したい。
4(A)は一昨年の「不要語指摘問題」に戻った。特に難解な部分はない。4(B)は昨年度の内容説明問題を含む和訳問題から,和訳問題のみの出題に戻った。(1)のA case can be made(←make a case「正当性を立証する」)の訳出が難しい。
5は例年通りの長文読解問題で,設問数が1題増えた。(8)の内容説明問題は,字数指定もなくややまとめにくい。(9)の出来事を起きた順に並べる問題は,回想部分に注意して追っていけば答えられるが,東大では珍しい出題で戸惑った受験生もいるかもしれない。
1,3で失点をいかに減らすか,そして2,4(B),5でどれだけ得点を積み重ねることができるかで合否が決まる。

【東大】物理
各大問の前半(第1問の(1)~(3),第2問のⅠとⅡ,第3問の(1)~(3))は,確実に解きたい。合格の必要条件である。
第1問の後半は差がついたと思われる。処理の方法がすぐにわからない場合は,後回しにする方がよい。
第2問のⅢは,解答の指針が見えにくく,負担感が大きい。設問の順序からは,定性的な考察によって(3)の答を得た上で計算によって(4)の答を 導く,というのが模範的な解答であると考えられる。しかし,実際の試験では,しらみつぶしの計算によって(3)と(4)をまとめて解答することに なるだろう。この場合,忍耐力が必要である。
第3問の(6)は,高校物理の範囲外である。受験生にとってなじみのない語句は問題中で説明されているが,試験時間内に解答するためにはセンスが 必要である。
第3問で8割,第1問と第2問をあわせて6割が合格ライン。

【東大】世界史
・大問3題の構成は例年通りですが,総論述字数は2013年度の900字から増加し,960字となりました。難易度は例年並みであり,近年の傾向から見ると,高得点勝負となるでしょう。
・第1問は19世紀ロシアの対外政策についての問題でした。分量は600字で多いですが,盛り込むべき事項として思い出せる事柄も多いので,制限字数内でバランスよく解答をまとめてほしいと思います。バルカン半島での南下を阻止されたロシアが,アジアにその矛先を転じたことを念頭に置いて,大きく「バルカン半島」「中央アジア」「中国」の3地域に分けて整理するとよいでしょう。
・第2問では,問(1)・問(2)-(b)がやや問題文の意図を読み取りづらく,何について書くべきか悩む問題でした。一方,問(3)は知識の有無が勝負であり,戦後史まで入念に対策しておく必要がありました。
・第3問では,2007年度以来の1行(=30字)で記述する論述問題が出題されました。問6がややまとめづらいものでしたが,全体的に標準的な問題が多く,失点は最小限にとどめてほしい大問でした。
・東大世界史に太刀打ちするためには,まずは基本的な知識を磐石にすることが重要です。歴史事項を個別に丸暗記するのではなく,その事象が世界史上でどのような意義持つのかといった点を意識しながら,教科書の全範囲を読み解いていきましょう。また,東大世界史の最難関は,やはり論述問題ですから,得点を勝ち取るためには論述力の強化が必須となります。過不足がなく完成度の高い答案を書くには,かなりの練習を積む必要があるので,早いうちから様々な演習問題に当たり,「文章表現力」「読解力」「論理的思考力」を鍛えていきましょう。

【京大】数学
1 は,2013年度に引き続き,単問での出題であった。
2012年度,2013年度には複数の小問に分かれた問題が出題されていたが,今年はすべて小問のない問題であった。
京大数学の特徴である証明問題は,今年は出題されなかった。
1 ,2 は京大受験生ならば落としてはならない問題。6 は計算がしっかりできるかどうかの問題であり,合格に向けては得点しておきたい問題。3 ,4 ,5 でどのくらいの点数が取れるかが勝負の分かれ目と思われる。全体で5~6割程度の得点が目標である。とくに医学部医学科では,7~8割程度まで得点を伸ば すことが必要と思われる。

【京大】国語
古文が昨年度よりやや易化したものの、全体の難易度は京大入試としては標準的。問題文読解・解答作成ともに負担が重い、京大らしい骨のある出題だった。大問一は、筆者の文学的な表現を自分なりに解釈しまとめなおす必要がある出題。傍線部周辺の要素をつなぎあわせるだけでなく、自分の言葉で解答をふくらませる必要があるが、どこまで踏み込んでまとめるべきかの判断に迷う。大問二は、語注が22もあり文語文の引用もある文章からの出題で、読解の負担が重く戸惑った受験生も多かっただろう。ただ、全体の論旨をつかむことができれば、設問ごとにまとめるべき要素は比較的わかりやすい。大問三の古文は、リード文をきちんと押さえれば状況は比較的つかみやすい。作者と院の関係、作者の心情を丁寧に追っていくことが求められる出題であり、細部にまで気を配ってミスなく解答をまとめられるかどうかで差がつくだろう。京大国語は付け焼き刃の対策では太刀打ちできない。日頃から幅広いジャンルの文章読解に取り組み、「京大らしい」文章への対応力を養おう。

【京大】世界史
・大問4題で,Ⅰ・Ⅱがアジア史,Ⅲ・Ⅳが欧米史,Ⅰ・Ⅲが300字論述,Ⅱ・Ⅳが空欄補充問題と長文下線部問題という構成は例年通りでした。難易度は標準的なものがほとんどのため,高得点が求められます。また,総論述字数600字,それ以外の小問が58問と出題数が多いので,試験は時間との戦いとなります。
・Ⅰの論述問題は「中国における科挙の変遷」を問うたもので,オーソドックスなテーマではありましたが,「政治的・社会的・文化的な側面にも留意」することが求められており,科挙の変遷を説明する上でとりわけ重要なポイントを取捨選択し,時間内に300字でまとめ上げる力量が必要でした。
・Ⅱはオーソドックスな問題がほとんどでしたが,孝文帝時代の南朝の王朝を問うた(3),黄河と淮河を結ぶ運河を問うた(5)はやや難問でした。
・Ⅲの論述問題は「冷戦期のドイツ史」をテーマとしており,こちらは「ヨーロッパでの冷戦の展開との関連に焦点をあて」という条件をどのように実現するかがポイントとなります。戦後史という意味で苦戦した人もいそうですが,戦後史をしっかり学習していれば,書くべき要素を挙げるのは難しくはなく,むしろ,要素の絞込みに苦労したと思われます。
・Ⅳはオーソドックスな問題がほとんどでしたが,「シチリアの晩鐘」事件で暴動の標的となった王家を問うた(4),エジプトのモノカルチャー作物を問うた(16)の(イ)などはやや難問でした。
・京大世界史は,確実な知識が求められるほか,短時間で問題を解き,論述をまとめ上げる力も必要とされます。ですから,受験対策の第一歩となる教科書学習や一問一答などを早めに開始することが攻略のカギとなります。

【京大】英語
下線部英文和訳2題,和文英訳1題という例年の形式を踏襲しているが,難易度は,両形式ともに,易しめだった2013年度よりは上昇した。
下線部英文和訳については,どちらも学問そのものをテーマとした英文であることが特徴的。特に,Iはまさに京大受験生へのメッセージ性を感じられる内容になっているが,難易度としてもこちらが特に難しいと感じられたであろう。(1)の at their own risk,(2)の defend それぞれの訳,(3)第1文主節の構文解釈では差がついたと思われる。Ⅱは京大としては標準的な難易度だったが,決して易しくはない。(2)の for lack of a better term の解釈,(3)の just in case they are(related)の解釈では差がついたと思われる。どちらの問題も,長く入り組んだ構文を正しく解釈して自然な日本語に整える力,1つ1つの語彙に対する深い理解,文脈をふまえた適切な訳出の力を問う,京大らしい問題であった。
和文英訳については,エッセイ調の「何気ない」日本文を通じて,日本語らしいこなれた表現を,いかに英訳しやすいように読み換えるか,という高度な能力が2013年度以上に問われている。(1)は,「アメリカほどではないが」「中高年層に限らず」「きちんと製本された」「何とも言えない味わい」といった表現の適切な訳出で差がついたと思われる。(2)は「運転手さん」「さっきの駅」「必死の形相」といった表現に加えて,「大きな声を張り上げて車内の人込みをかき分けて走ってきた」という修飾の多い表現の訳出でも差がついただろう。

【京大】物理
京大物理は昨年度より全体として易化。2012年度、2013年度と、全体的に難度が高いうえに、試験時間に対する分量・計算量が多く、解答の際の負担感が非常に大きい出題だったが、今年度は計算量が減り、素直に解答できる易しい設問が増えた。グラフの作図問題は例年1~2題だが、今年度は4題出題された。日ごろからグラフを描いて物理現象を理解する習慣がある受験生には大きなアドバンテージになっただろう。例年、Ⅰが力学、Ⅱが電磁気学、Ⅲがその他の分野(熱力学、波動、原子)からの出題だが、今年度も同様で、Ⅲは熱力学からの出題だった。Ⅰはばねに繋がれた小球と台車が同時に運動する一見複雑な設定であるが、問題文の誘導が親切で、前問がヒントになることも多いため、(1)や(2)は誘導に乗っていきたい。(3)は京大らしい骨のある出題だった。Ⅱは「電気容量の機能および抵抗の機能を備えているコンデンサー」という目新しい内容で、(1)は対策が手薄になりがちな交流回路の問題なので、とまどった受験生も多かったと思われるが、定義に素直に従えば(2)はよく見る直流回路の問題である。京大物理では途中で解けない設問があっても、大問最後の方で独立して解ける設問もあるので、最後まで諦めずに目を通して欲しい。Ⅲは気体分子運動論と熱サイクルに関する、最も解きやすく、典型的な内容だった。

2014年大学入試プロジェクト
Z会東大対策ブログ~Z会から赤門突破~